眠気と疲労の原因?交代制勤務者が体内時計のために避けたい習慣
交代制勤務と体内時計、そして避けたい習慣
交代制勤務は、日中の集中力を維持したり、十分な休息をとったりすることが難しくなる場合があります。その背景には、私たちの体に備わる「体内時計」、正式には概日リズムの乱れが大きく関わっています。体内時計は、約24時間の周期で私たちの体温、ホルモン分泌、睡眠と覚醒など、多くの生理機能のリズムを調整しています。
交代制勤務では、この自然なリズムに逆らったスケジュールで生活せざるを得ないため、体内時計がずれやすくなります。体内時計が乱れると、夜間に覚醒して日中に眠くなるだけでなく、疲労感が蓄積したり、集中力が低下したりといった問題が生じやすくなります。
ここでは、交代制勤務に従事される方が無意識に行いがちな、体内時計をさらに乱してしまう可能性のある習慣に焦点を当て、それらを避ける、あるいは改善するための具体的なヒントをご紹介します。日中のパフォーマンス維持や健康のために、ご自身の習慣を見直すきっかけとなれば幸いです。
無意識に体内時計を乱す可能性のある習慣
私たちの日常生活には、体内時計の働きを阻害したり、リズムを崩したりする可能性のある習慣がいくつか潜んでいます。特に交代制勤務の方は、非番の日やシフトが変わる際に、これらの習慣の影響を受けやすいため注意が必要です。
1. 就寝直前のスマートフォンやパソコンの使用
スマートフォンの画面などが発するブルーライトは、体内時計を調整する上で重要な役割を担うメラトニンというホルモンの分泌を抑制する作用があります。メラトニンは眠りを誘うホルモンですので、寝る直前に強い光を浴びると、脳が覚醒して寝つきが悪くなる可能性があります。夜勤明けの日中に寝る場合でも、寝室を暗くする配慮が必要です。
2. 就寝前のカフェインやアルコールの摂取
カフェインには覚醒作用があり、摂取後数時間にわたってその影響が続きます。特に夕方以降や、日中の睡眠前にカフェインを含む飲み物(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)を摂取すると、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりする原因となります。
アルコールは一時的に眠気を誘うことがありますが、睡眠の後半で覚醒を促し、睡眠を分断させたり質を低下させたりすることが知られています。深い睡眠を妨げ、結果的に疲労回復を妨げる可能性があります。
3. 不規則な食事時間や夜間の重い食事
体内時計は光だけでなく、食事の時間によっても影響を受けます。不規則な時間に食事を摂ったり、特に夜間や睡眠前に消化に時間のかかる重い食事を摂ったりすると、消化器系の体内時計が乱れるだけでなく、全身の体内時計にも影響を与える可能性があります。これにより、睡眠の質が低下したり、日中の眠気につながったりすることがあります。
4. 週末の極端な寝溜め
非番の日や週末に平日の睡眠不足を解消しようと、普段より何時間も長く寝てしまうことは、体内時計を大きく後ろにずらしてしまう可能性があります。これは「ソーシャル・ジェットラグ」とも呼ばれ、まるで時差ボケのような状態を引き起こし、次の勤務日に体内時計を戻すのが難しくなります。
5. 日中の不適切な光環境
夜勤明けで帰宅した後、明るい日差しを長時間浴びてしまうと、体が「今は活動時間だ」と誤認識し、体内時計のリズムが乱れる可能性があります。また、日中に眠ろうとする際に、寝室が明るいとメラトニンの分泌が抑制され、深い睡眠が得られにくくなります。
6. 運動習慣の不足あるいは不適切なタイミングでの運動
適度な運動は睡眠の質を高め、体内時計を整える助けとなりますが、運動不足は体内時計の乱れにつながる可能性があります。また、就寝直前や日中の睡眠直前に激しい運動をすると、体温が上昇し覚醒レベルが高まるため、寝つきが悪くなることがあります。
7. 慢性的なストレスの放置
過度なストレスは、自律神経やホルモンバランスを乱し、体内時計にも悪影響を及ぼします。慢性的なストレスは、不眠や疲労感の原因となり、交代制勤務による体内時計の乱れをさらに悪化させる可能性があります。
体内時計を整えるための習慣改善ヒント
これらの体内時計を乱す可能性のある習慣を見直し、少しずつ改善していくことが、日中の集中力維持や疲労軽減に繋がります。以下に、実践的なヒントをいくつかご紹介します。
- 就寝前の習慣を見直す:
- 寝る1〜2時間前からはスマートフォンやパソコンの使用を控えましょう。使用する場合は、ブルーライトカット機能を利用したり、画面の輝度を下げたりする工夫が有効です。
- カフェイン摂取は、日中の勤務中や覚醒が必要な時間帯に限定し、睡眠時間の数時間前からは避けるようにしましょう。
- 就寝直前のアルコール摂取は控えめにし、リラックスできるノンカフェインの温かい飲み物(ハーブティーなど)に変えることを検討しましょう。
- 食事のリズムを意識する:
- 可能な範囲で、毎日同じような時間帯に食事を摂るよう心がけましょう。
- 夜間や睡眠前の食事は、消化の良いものを少量にするなど配慮が必要です。
- 週末の過ごし方を工夫する:
- 週末の寝溜めは体内時計を大きくずらす原因となるため、平日との睡眠時間の差を1〜2時間以内にとどめるのが理想です。
- 起床時間を大きく変えないようにし、活動時間を調整することで体内時計のずれを最小限に抑えることを目指しましょう。
- 光環境をコントロールする:
- 夜勤明けに帰宅する際は、サングラスを着用したり、電車やバスでは窓側の席を避けたりするなど、強い日差しを避ける工夫をしましょう。
- 日中に眠る際は、遮光カーテンを利用して寝室を徹底的に暗くすることが重要です。耳栓なども活用し、外部からの刺激を減らす工夫をしましょう。
- 運動習慣を取り入れる:
- 日中の覚醒時間帯に、無理のない範囲でウォーキングや軽いストレッチなどの運動を習慣にしましょう。これにより、体温リズムが整いやすくなります。
- 激しい運動は就寝時間や日中の睡眠時間の3時間前までには終えるのが望ましいです。
- ストレスマネジメントを取り入れる:
- 交代制勤務のストレスを軽減するために、リラクゼーション法(深呼吸、軽いストレッチ、音楽鑑賞など)を取り入れる時間を意識的に作りましょう。
- 趣味や交流など、心身のリフレッシュに繋がる活動を大切にすることも有効です。
まとめ
交代制勤務に従事する方にとって、体内時計を完全に自然なリズムに合わせることは難しいかもしれません。しかし、ご紹介したような日々の習慣を見直し、意識的に改善していくことで、体内時計の乱れを最小限に抑え、日中の眠気や疲労感を軽減することは十分に可能です。
ご自身の生活リズムや勤務形態に合わせて、できることから少しずつ取り組んでみてください。継続することで、体内時計が安定し、日中の集中力向上や全体的な健康状態の改善に繋がることが期待できます。どうしても改善が見られない場合や、強い眠気や疲労が続く場合は、専門機関に相談することも検討しましょう。